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カービィコンサート感想+25周年おめでとう!

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先週の日曜日、『星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート』に行って参りました。

遅ればせながら、今日でちょうど25歳になるカービィへのお祝いの気持ちも込めて、今回はその感想について書きます。 

【目次】 

出会い

まずは出会いから。

コンサートの存在が明らかにされたのは、振り返ること5ヶ月前。

年さえも跨いで去年の12月。

星のカービィロボボプラネット』のサントラが発売されました。

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「ロボプラ」のBGMは歴代のカービィの作品の中でもトップクラスにクオリティが高く、某ゲーム音楽ランキングでも「VS.スタードリーム」や「回歴する追憶の数え唄」を筆頭に様々な曲がランクインするなど広く評価されていました。

もちろん僕もこの珠玉のサウンドに惚れ、当然のようにロボプラのサントラを予約しました。

 

すると、発売当日になって衝撃の事実が明らかに。

 なんと、サントラの発売日に突如としてオーケストラの開催が決定、そしてサントラに優先申込券の封入があることが判明。

衝撃的な発表でしたが、これはかなり上手い方法だと思います。

というのも、オーケストラコンサートにわざわざ行きたいと思うような本当にカービィの音楽が好きでたまらない人なら、当然サントラの予約はしてあるだろうから。

本当にコンサートに行きたい人に優先的に券が行き渡ったことと思われます。

ただ、この優先券でも落選した人はいたのだとか。倍率どれ位だったんでしょうかね……?

 

幸いにもロボボサントラを予約していた僕は難なく優先券を手に入れ、一発で当選できました。

これが今年の頭の方の出来事。

当日朝

それから待つこと3ヶ月。

絶対に予定が入らないように神経をピリピリさせながら、当日に体調を崩したりしないように気を使い、やっと迎えた当日4月16日。

 

僕が手に入れた券は午後の部のものだったのですが、物販があったため当日の朝早くに渋谷bunkamuraへ。

ちなみに物販の品はこちら。限定グッズが目白押し。

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パンフレットとメモリアルグラス、そしてクリアファイルを購入しました。

 

 

そして午後の部までの暇つぶしにカラオケに入り軽く睡眠を取ったのち、

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JOY SOUNDなら必ず入ってます。皆さんも是非歌ってみては。

ええ。歌ってやりましたとも。

「ロボボプラネット」登場する悪の企業「ハルトマンワークスカンパニー」の社歌、銀河に名だたるハルトマン』。

 

そして次に初代『星のカービィ』をプレイしました。

www.nintendo.co.jp

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25周年の節目のビッグイベントの直前ですもの、身も心も清めて迎えて行きたいものです。

 

入場

さあいよいよ開演。

入口で何故かサイリウムの入った袋を渡され、いざ会場へ。

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 灯りは消えても、思い出の輝きは永遠。

会場は思ってたよりも大きく、色とりどりの照明に大型モニターと豪華でした。

入場した時のライトは青や紫を基調とした、「夢の泉」を彷彿とさせる幻想的な色合いでした。

 

開演(前半)

いよいよ始まりました。

1曲目「星のカービィ 25周年 グランドオープニング」

第一印象が大事とはよく言われますが、こういう長い催しのスタートダッシュって、演奏者側はもちろん聴く側も何だかそわそわ、緊張してしまうものです。

オーケストラ恒例の厳かな調律が終わったのち、

一瞬の静寂、

緊張、

 

そして、、、

 

 ふわっ

 

流れ出したのは春風のような、爽やかに吹き抜ける音でした。

はるかぜとともにプププランドにやってきたカービィですが、当日のぽかぽか日和も合間って、暖かい音を感じました。

演奏されたのは、王道を行く初代『星のカービィ』の「タイトル」と「グリーングリーンズ」。

特にカービィシリーズ全体を通してのテーマ曲とも言える「グリーングリーンズ」はファンとしては分かっていても嬉しい選曲。出だしにふさわしい、楽しい気分になれる1曲目でした。

 

1曲目が終わった後に、司会の2人がやってきてカービィという作品の思い出をちょろっと語ってくれました。

そして「本公演のイメージイラストのモチーフともなっている……」との紹介を受け演奏されたのが、

2曲目「星のカービィ 夢の泉の物語メドレー」

ファミコン用ゲームソフト『星のカービィ 夢の泉の物語』は、カービィシリーズの2作目にして、初めてコピー能力や仮面の騎士メタナイトが登場した作品。

後のカービィシリーズの方向性を大きく決定づけたこの「夢の泉」はそれだけに根強いファンも多く、リメイクされたり色んなファングッズのモチーフになってたりします。

この記事のトップ画も、「夢の泉」のキャラがメインで雰囲気も作中に登場する夢の泉ちっくな感じ。。。

 

さて肝心の選曲ですが、これは個人的には意外な所で、

「グレープガーデン」と「オレンジオーシャン」でした。

良曲揃いの「夢の泉」の中でも、ずば抜けてお気に入りなグレープガーデンをチョイスしてくれたのは嬉しかったです。

この二曲に加え「LEVEL8 THE FOUNTAIN OF DREAM」とエンディングを加えた、しっとりと切なく染み渡る2曲目でした。

最後に照明の演出でバックに大量の星が出てきたのはナイトメアパワーオーブを彷彿とさせて素敵でした。

3曲目「デデデ大王&メタナイト・タッグメドレー」

カービィの次にシリーズの中でも中心的な役割を担うデデデ大王メタナイト

この2人のテーマ曲をうまく繋げてメドレーにした曲はロボボプラネットの「伝導電磁式三連砲:D.D.D.(クローンデデデ戦BGM)」もあり、初見でこのアレンジに痺れた身としてはこの2人の組み合わせは燃えました。

コンサートで演奏されたメドレーは、マスクド・デデデのテーマ、戦艦ハルバード、「メタナイトの逆襲」EDなどの名曲を詰め込んだ豪華なアレンジが印象的でした。

4曲目「星のカービィ2 なかまメドレー」

間髪入れずに演奏されたのが「2」に登場するしもべなかまのリック、カイン、クーのメインテーマ。

個人的には、カインのテーマが想像以上にオーケストラとの相性が良かったです。壮大なアレンジには、思わずキラキラ輝く幻想的な海の世界にいるような夢見心地になってしまいました。

続くクーのテーマもカッコよくキマっており、綺麗に4曲目を締めてくれました。

ゲストの登場

さて、時系列がごっちゃになってるので確証はないですが、確かこの辺でゲストが登場しました。

事前に明かされているゲストはカービィパパ生みの親、桜井正博さんとカービィの中の人、大本眞基子さんのみでした。

しかしここでサプライズ、なんとカービィシリーズの現ゼネラルディレクター熊崎氏にHAL研サウンドチームの皆様方が勢揃い。

そして繰り広げられる愉快なトーク、飛び出す開発秘話、挙げ句の果てに何故か初代「星のカービィ」の開発秘話をジョブズさながらにプレゼンし始める桜井氏。巧みな話術で観客も大笑い。

個人的ハイライトは、石川さんの語った桜井熊崎両ディレクターの比較(詳細は多くのゲームメディアが報じているのでそちらを参照)と、突然ボス戦のBGMを口ずさみ始める熊崎D。

熊崎「ドゥルルルルルルッジャ-ン」

突然の展開に観客もざわめき、次第に笑いが漏れ始める。僕は初っ端から大爆笑でした。

ゲーム作りのセンスもさることながら、人間性まで面白いなんて。熊Dほんと好き。

ちなみにこの時は「カービィシリーズに特有のボス登場時にBGMに合わせて鳴るゲージ音の重要性」という、なんども頷きたくなるような大事な話をしていました。そのギャップで余計に笑ってしまって。ちなみに僕が好きなボスのゲージ音はドロシア戦とゼロ戦です。

そしてなんとなんとカービィご本人の登場。

ハッピーバースデーソングのオーケストラによる豪華な演奏、観客みんなで「カービィ、おめでとーう!」そしてケーキまで登場して

熊崎「吸い込んだらスイーツカービィかな?」

桜井「いや、回復するだけでしょ」

なんてやり取りも。

カービィには大本さんがその場で声を当てててビックリ。

大本さんの声当てと言えば、今までセリフの声が付いていなかった「トリプルデラックス」のクィン・セクトニアや「ロボボプラネット」のスージーが、なんとモニターでセリフつきの掛け合いを始める展開も!

イメージ通りの声で、しかも今まで直接の接点はなかった2人が声付きで喋ってくれる様はファンとしては感激もの。

さらに、その流れでスージーが『銀河に名だたるハルトマン』を歌ってくれました。

歌普通に上手くてビックリしました。音源欲しい。

5曲目「星のカービィ3&64メドレー」

話が大幅にそれました。

この辺で、発売された時系列順にカービィの歴代作品を辿っていることに気づき始める。

64の選曲はポップスター、リップルスター、ゼロツー、と納得の王道だったのですが、3のチョイスが海ステージ(リップルフィールド)と砂漠ステージ(サンドキャニオン)と意外なライン。でも2曲とも個人的に好きな曲なので嬉しかったです。

特に砂漠ステージは、ピラミッド面の背景の不気味さ、謎解きの難しさ、そして曲単体の良さもあって思い入れが強く、演奏された時は思わず感涙してしまいました。

6曲目「星のカービィ スーパーデラックスメドレー」

やっぱカービィと言ったらこれ。

熊崎Dも語っているように、カービィ史を二等分したら前半の金字塔とも言えるのがスーパーファミコン用ソフト『星のカービィ スーパーデラックス』。

グルメレースに水晶畑、マルクにカービィ凱旋と人気が高く知名度の高い曲をわんさと盛り込んだアレンジは、SDXのボリューム感たっぷりなオムニバス形式を彷彿とさせる豪華さでした。

前半のトリを華々しく飾ってくれた6曲目でした。

後半

7曲目「カービィのエアライドメドレー」

僕の世代では「第二のスマブラ」的な感じで語られることの多い「カービィのエアライド」。BGMはGCの性能を生かした豪華なものが多く、その中でも特にオーケストラ映えする曲をHAL研サウンドスタッフの1人である酒井さんがチョイスし、自らタクトを振ってくれました。

オーケストラ映えという基準による選曲だったため、意外にも「プランテス」「マグヒート」なんてチョイス。個人的には「コルダ」や「チェックナイト」辺りも聴きたかったのですが、十分満足できる素敵な演奏でした。

最後は「伝説のエアライドマシン」のカッチョいいメロディで鮮やかにフィニッシュ。

切れ味の鋭いアレンジでした。

8曲目「星のカービィ鏡の大迷宮&参上!ドロッチェ団メドレー」

ドロッチェ団」の選曲は「プリズムプレインズ」に「ドロッチェ団のテーマ」と無難な感じ。「鏡」の「森・自然エリア(レベル1)」までは読めたのですが、まさかまさかの「宇宙エリア(レベル9)」。キャンディコンステレイションの方がしっくりきますかね。

ゲーム内では最後に到達することが多いんじゃないかと思われるレベル9。ワープスターに唐突に宇宙に連れてこられいきなり壮大な曲が流れた時のワクワク感は僕のゲームの原体験の1つです。一番最初にプレイしたカービィの作品が「鏡の大迷宮」だったのです

演奏の方もゲームプレイ時に感じた「冒険の果てに広大無辺な最果ての宇宙に辿り着いた高揚感、開放感」をそのまま音に溶かし込んだ感じで素晴らしかったです。宇宙を感じました。

9曲目「ボールになったカービィメドレー」

ドロシアで死にました。

 

 

 

詳細を語りましょう。

このメドレーはカービィがボールになった時の外伝作品から4曲のチョイス。

出だしは「カービィのピンボール」。

続く「カービィボウル」の「コース8」は幻想的な氷の海のイメージが強い幻惑的な曲。青く美しい照明と共に奏でられる美しい音色から南極のオーロラを脳裏にイメージしました。

「スーパーレインボー」の「天かける虹」はHAL研サウンドスタッフの新入り大原さんが初めて作曲したという政策秘話と共に奏でられた爽快な一曲。突き抜ける青空のような爽やかな旋律に魅了されました。

そして、問題の「ドロシア」。

タッチ!カービィ」のラスボス「ドロシア・ソーサレス」との戦闘曲が演奏されました。

僕は「タッチ!カービィ」という作品が本当に大好きで、ゲーム全体、いや、今まで触れてきたあらゆる創作物の中でもかなり上位に位置することを疑わないレベルで愛しています。

魅力は一言でいうなら「高い芸術性」。特にラスボスのドロシアは造形、設定、ステージ背景、曲どれをとっても最高レベルです。

で、そんな彼女の曲を25周年の節目の記念すべき日に、スクリーンにてその御姿を拝みながら、聴くことができたと……!

こんな幸せがあるだろうか。大粒の涙をこぼしながら、これまで生きてきた全てに感謝した9曲目でした。

10曲目「星のカービィ トリプルデラックスメドレー」 

ラスト3曲はいよいよ近代編。出だしを飾るのはトリプルデラックス。

花畑、セクトラトア、タランザ、狂花水月とこれまたとことん王道を詰め込んだ感じ。

タランザのテーマは元々好きだったのが、カービィハンターズZでのアレンジでさらに魅力を感じていた最中だったのでテンション上がりました。

狂花水月は言わずもがな。オーケストラになって、より荘厳に、より美しく、より切なくなった音の調べが感傷を呼び起こしました。

個人的にはトリデラは『そらにうかぶどうくつ』や『天空に沈む夕陽』なども好きだったのですが、上記に比べるとややマイナー寄りな2曲なので、致し方なしですね。。。

11曲目「星のカービィ ロボボプラネットメドレー」

さあ待っていました最新作。ロボボプラネット。

ロボボアーマーにスタードリーム、そしてEDココロプラネット。

これも王道ながらも、最新作なりにネタバレに配慮した絶妙な選曲。

電子音の印象の強いロボボアーマーがオーケストラで演奏されるのは意外でしたが、新鮮な音を聴くことができて満足でした。

一方スタードリームは来るのは予想できてても、やっぱり来てくれると嬉しい。メタ逆(カービィ凱旋)のメロディのところは思わず涙してしまいました。

12曲目「星のカービィ Wiiメドレー」

やはり最後はあなたか……!なチョイス。

MCから「最後の曲はカービィWiiのメドレーです!」と宣言があった時には、来るのが分かっていても思わず心がざわっとしました。

ファン的にも、おそらく制作サイドにとってもカービィWiiは復活と再生の象徴であり、特別な感情のこもった作品のはず。それを考えると聴いてる最中も、そしてこの文章を書いている今でさえ、グッとこみあげて来る思いがあります。

Wii」の一番最初のステージ「クッキーカントリー」のBGM「ぼうけんのはじまり」による軽快なスタートからの、

Wii」の前半部の終盤を華々しく飾るカービィBGM屈指の名曲「スカイタワー」。

この曲は元から相当好きだったのですが、何度もアレンジされる内にますます恋慕の情が深まっていきました。特に好きなのはWiiの原曲「スカイタワー」、「20周年スペシャルコレクション」のEDに挿入されるパート、そして「カービィカフェ」の「Sunset Tower」の3つです。

そこから最終盤の「デンジャラスディナー」へ繋ぎ、歴代のカービィサウンドが随所に散りばめられた根強い人気のラスボス曲「CROWNED」、そして「Return to Dreamland」で綺麗に締める。

これ以上ないほどの最高の構成。鳴り止まない拍手に会場とのシンクロを感じる。嗚呼、これがコンサートの醍醐味か。

アンコール曲「銀河に願いを:スタッフロール」

「これ以上」、早速ありました。いや、まぁアンコールはあるだろうと思ってはいたんですけどね。やっぱりあると嬉しいですよね。(このパターン何度目だろう)

ここに来て「入場」の項で触れたサイリウム先輩のお出まし。

感動の渦に包まれおぼつかない手つきで強引に袋を裂き、灯りを灯す。

暗い会場にぽつ、ぽつと灯り始める赤青紫の灯り。その1つ1つが大なり小なりカービィを好きな人により灯されたものだと意識すると、カービィへの愛が輝きを放っているんじゃないか、そんなロマンチックな空想をかきたててくれました。

暗闇を彩る星々のような愛の光、その星の一つ一つに、これからもカービィを好きでいてくれますように、と願いながら。。。

静かに終焉へと導かれる曲。でもこの終わりは、25周年の節目を祝う序章に過ぎないのだと、そう思うと何だか胸が希望に満たされていくようでした。

おわりに

きらきら輝く星のような思い出を残して、夢のような空間は一刻の終わりを告げました。それでも、ゴハンたべてまくらをたかくしてねむりについたら、あしたはあしたのはるかぜとともに、また、いつか、あえるよね。

 

だから最後にひとことだけ言わせて。

カービィ、お誕生日おめでとう。

 

追記(06.18)

今日は大阪での講演日らしいので追記を書いてみました。

上述の通りですが、カービィコンサートではパンフレットが販売されていました。

パンフレットの中身は曲の紹介や作曲者へのインタビューなどごく一般的なものでしたが、その内容は非常に濃密で、ここで初めて日の目を見ることとなった開発秘話なども数多くありました。

なにぶん文章のボリュームのあるパンフレットでしたので全てを紹介することはできませんが、中でも特に個人的に気になった話だけかいつまんでご紹介します。

ボールメドレーについて

9曲目の「ボールになったカービィメドレー」についてのコメントで面白いものがありました。

まず「カービィボウル」の音楽について。

個人的に「カービィボウル」はBGM全体から醸し出される独特の幻想的な雰囲気が大好きなのですが、解説の所にも「BGMも少し落ち着いた、どこか大人の雰囲気です。」と書かれていたのが印象的でした。

また、その理由もカービィボウルの「じっくり考えて進める場面が多」いゲーム性に起因していることが示唆されていました。ゲーム性によって音楽の雰囲気が決定づけられるというのは実に興味深いものです。

次に「タッチ!カービィ」の「ドロシア ソーサレス」について。

オーケストラで演奏されたドロシアソーサレス戦のアレンジは、実は熊崎さんからは「もっとバトルらしさを増そうという提案」をされたものの、「独特な味わい」を感じた酒井さんが「そのまま押し通し」たのだそうです。

この曲で大きく心を揺り動かされた身としては、とても面白い話だと感じました。

確かに演奏された「ドロシア ソーサレス」は、原作の激しい曲調とは裏腹にしっとりとした静かでどことなく耽美な雰囲気さえ漂う、大胆なアレンジでした。

原作で敵として対峙する時は原作のバトル調の曲が実にマッチしていたのですが、25周年の記念の場で演奏されたアレンジはドロシアの悲しい生い立ちに対する憐憫の情を込めた鎮魂歌のように聞こえたのを今でも思い出します。

石川さんのインタビュー

カービィの音楽を25年間ずっと支えてきた立役者である石川淳さんと安藤浩和さん。お二方の紡がれる極上のサウンドは多くのファンを魅了してきました。

事実カービィのBGMは評価が高く、ちょくちょく有志による「ゲーム音楽ランキング」なるものにもランクインしてる他、先日「キーボード・マガジン」という音楽雑誌にこのお二方が取り上げられるまでに至りました。

さてパンフレットには当然このお二方へのインタビューも掲載されていたわけですが、とりわけ石川さんのインタビューの中にはカービィBGM史を語る上で重要な記述が見られました。

「自分の持っているものを全部出し切ったのが、『星のカービィ スーパーデラックス』だと思っています。」石川さんはインタビューの途中でこのように語っています。

前述の通りカービィの歴史の中で前半の金字塔に当たる「スーパーデラックス」は、BGM的な意味でも金字塔だったわけです。

しかし、本当に面白いのはここからです。

石川さん曰く、音楽を生業にする人の間では全てを出し切ってからが本当のスタートだという話がよくされるそうです。

その流れの中で、『星のカービィ3』について石川さんは「非常に強い決意で作りました。」と言及しています。

「3」はピラミッドの曲やダークマターゼロ戦など個人的にかなり思いの強い曲があるので、この記述を読んだ時はちょっとうるっときました。

そこから先はやや専門的な話も交えながら「カービィの音楽も幹となる部分を全部ゼロから植え替える作業が必要」だと感じたことを石川さんは語っていました。

実際「3」の曲は音の質感からしてかなり独特で「3」より前の作品と比較すると大幅な変化が見られるのですが、どうやらその変化は他のスタッフに中々受け入れられなかったそうです。

www.nicovideo.jp

11分くらいから始まるSDXのデデデ戦とその後に続く3のデデデ戦を比較するとわかりやすいかもしれない。

そんな「植え替え」の作業に悪戦苦闘する石川さんの前に現れたのが、なんと岩田社長。当時HAL研究所の社長だった、元任天堂社長の岩田さんは「植え替え」に対し「何も言わず、じっと見てくれていた」そうです。

石川さんはもし岩田さんからやり直しを命じられたら「今の私の『カービィ』はなかったかもしれません。」とまで語っています。

亡くなられてなお、こんな所にまで偉大な逸話を残す岩田さんに感動するばかりです。

「幹の植え替え」という話題に関連して、この後は「タッチ!カービィ」のBGMの話が語られていました。あの独特なテクノ調の曲が好きな身としてはこれまた嬉しい話題でした。ことごとくツボを抑えてきやがる……

 

語りたいことは山ほどあるのですが、ひとまずここまで。

改めて、スタッフの皆様はもちろん実際に行かれたお客さんも含め、大阪公演お疲れ様でした。

2回目の東京公演の方でも頑張ってください。