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caminoのnoteでcaminote(カミノート)。日々の思いをつらつらと。

「キャラ」と「物語」から読み解くゼノブレイドの魅力(中)

ゼノブレイド7周年おめでとう企画の一環として始めたこの一連の記事。気がつけばもう8周年に突入していました。ゼノブレイド8周年おめでとうございます。

さて前回に引き続き、「キャラ」に注目しながらゼノブレイドの「物語」の魅力について書いていきます。

今回もネタバレ全開&クリアして前提知識がある人向けに書くので、そうでない方は今すぐブラウザバックしてください。

 

さて、今回の内容は第6章から第9章まで。

すなわちゾードを撃破した後の黒い顔つき戦(厳密には第5章の最終盤)から、監獄島での黒い顔つき戦までです。

内容としては、冒頭でダンバンさんが合流し、そしてリキメリアとパーティメンバーが一気に増える辺りです。またフィールドもマクナ原生林やエルト海などバラエティに富んでおりプレイしていて一番楽しい章といっても過言ではないです。

ところで、今回は基本的に章ではなく物語的な展開で文章を分けています。その方が楽だったので

前置きが長くなりましたが、それではどうぞ。

ダンバン復帰

あえて5章最終盤の黒の急襲をここに持ってきたのは、少しディープに書きたいからです。

「黒い顔つきはここにはいなかった」

「果たしてそうかな?」

の声と共に背後から飛び出る「黒」。まずこの構図がいい

そして

「気持ちよかったぜあの女の感触」

モナド使いは邪魔なんだそうでよ」

と、とことんまでゲスっぷりを発揮しつつも背後にいる「何者か」の存在を匂わせる「黒」。実にいい「悪役」の描き方です。

そして劣勢に立たされるシュルクのもとに、崖の上から「突っ込めイノシシ!」。

下村氏の「引けない戦い」をバックに描かれる一連の戦闘シーンもといダンバンさんの無双シーンはもう、最高。

第5章から第6章へ

この後の展開も丁寧です。

ひとまずジュジュを助けるという目的を達成した後に本来の「黒」の打倒という目的に立ち返り、でも今のままでは太刀打ちできないことを示し、そしてすぐさま未来視で「監獄島」という新たな目的地を提示する。

RPGにおいて物語上の目的がハッキリしているということは快適に遊ぶ上で欠かせない要素なので、その辺をしっかり分かりやすく提示してくれるのはゼノブレイドの良いところです。

その一方で、後の物語に密接に関わってくるテレシアやアルヴィースをチラッと見せるのも巧い。

さてダンバンさんの復帰に引き続き、この章ではメリアにリキとパーティメンバーが一気に増えて賑やかになります。またパーティメンバーではありませんがディクソンやアルヴィースなど味わい深いキャラたちも一時的に同行します。

燐光の地ザトール・巨神胎内

音楽、風景共に幻想的なザトール。

ここでは復帰してきたダンバンさんが早速カッコいいところ見せてくれます。

そういえば物語とは関係ありませんが、ここでのシュルクとダンバンさんのキズナトークが結構好きです。シュルクの科学者的な好奇心が伺えるところなので。

ザトールを出るときに、シュルクが改めてダンバンさんにモナドの使用権について尋ねるシーン。いちいち改まって許可を求めるシュルクシュルクらしくてなんだか可笑しいし、それに対し

「今の俺にはこの刀がある 返されても困っちまうよ」

はかっこよすぎますよダンバンさん。

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これほど心強い励ましはそうあるもんじゃない。

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冒頭のセリフの回収いいね。

ザトールを出たタイミングで一時的に巨神の胎内に入る展開もまた良しですね。最終盤でもう一度ここを訪れることになろうとは……。

その後のムービーでヴァネアやフェイスネメシスなどをチラ見せするのもまた巧い。先ほどのアルヴィースやテレシアもそうでしたが、次々出てくる新キャラや展開に対してさりげなく丁寧に伏線が張られているのでゼノブレイドは物語を楽しみやすいです。

メリアとの遭遇

さて巨神胎内を抜けたら次はマクナ原生林。

マクナではメリアにリキと次々心強いパーティメンバーが増えていくので楽しいです。

さてまずはメリア。初登場時からテレシアと戦い、従者を失うかなり報われない展開。テレシアの正体を知った上で改めて見るとかなりえげつないですね。

この戦いの果てにメリアは「エーテル欠乏症」なる状態に陥るわけですが、ここで世界観設定としてのエーテルについて、自然な流れで丁寧に説明がなされるのはいい演出だと思いました。こういう普段は戦闘でしか見ない要素がストーリーでも出てくるとテンションが上がります。(ずっと前から言っているゼノブレイドの「統一感」の一つ)

アルヴィース

そしてこれまた自然な流れ(メリア治癒のための結晶を取りに行く)でシュルクは単独行動となります。そして、度々シュルクの未来視の中で出てきていかにも重要キャラポジであることを匂わせていた彼、アルヴィースとついにご対面。

いかにも訳知り顔で、意味深な言葉を吐きながらシュルクをジロジロと観察するアルヴィース。声の感じも似てたためcaminoは初プレイ時は真っ先にエヴァのカヲルくんを思い浮かべてました。中の人同じだと思ってた

明らかに裏のありそうな怪しいキャラだったので何かあるなとは思ってましたが、まさか彼自身がモナドそのものゼノブレイドの世界自体を構築したコンピューターだったとは。そこまでは予想できませんでした。

このアルヴィースとの初対面時のイベントではモナドの秘密にガッツリ迫るのでこういうSF要素の好きなcaminoはテンションが上がってしょうがなかったです。

アルヴィースの魅力はやはり彼の正体が分かるラスボス撃破後にグワーっと上がるのでその時にでもまた。

サイハテ村

さてここではテレシア討伐という一つの目的に向けメリアとシュルクの距離が縮まる中、勇者リキさんがお目見えします。

これまでのパーティメンバーは、シュルク・ライン・ダンバンはフィオルンを、カルナはガドを、メリアは従者を失っており、明るく振舞っていてもどこか死別の悲しみの影を纏った暗い雰囲気が漂っているように感じられました。

そんな所に、バレーボールのようにポンポン飛ばされ挙げ句の果てにシュートされるやけにコミカルなリキの加入イベントが入ります。このイベント好き

この辺からプレイヤーの側も徐々にフィオルンショックから立ち直り、リキの明るさに癒され元気をもらえるように思います。

さてこのリキというキャラ、初登場時の印象としては可愛いだけのマスコットキャラって感じだったのですが、実際のところその時の印象からは想像できないほど深いキャラでした。まぁその深い魅力については後ほど。

とにかくこの時点ではまぁ可愛らしいことこの上ない。声や仕草がもう可愛いし、ちょっと小憎たらしいところもチャーミングポイント。あぁ可愛い。(語彙力)

ところでリキが「カンで選ばれただけの」勇者だという事がわかった時のダンバンさん

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これはかっこよすぎないか???英雄本人がこれを言うんだからたまらねぇ。この男、もはや何をしてもかっこいいのではないか(錯乱)。

テレシア討伐

さてリキという心強いオトモを伴い一行はいざテレシア討伐へ。

ここではメリアとシュルクの関係性の深化の様子が丁寧に描かれていて実に好ましいです。

とりわけ印象深いのは、諦めかけたメリアをシュルクが励ますシーンです。「大切な者を失った悲しさ、悔しさ」への共感を経て徐々にメリアがシュルクに心を開いていく心情描写は素晴らしく丁寧です。

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ここでさりげなく挟まれるラインがリキを庇うシーンでは、互いに憎まれごとを言い合いつつもなんだかんだ仲の良い2人の関係性がうかがえて嬉しくなります。メリア-シュルクにメインのフォーカスを当てつつも、リキ-ラインにもサブフォーカスを当てる手法は本当に細かくさりげない所ですが見事としか言いようがありません。

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無事テレシアを打ち斃したメリア。ここだけ貴族言葉ではない素の話し方になっている描写がまたいい。そろそろ褒める語彙が尽きる。

リキの正式加入

f:id:humming_camino:20170927220318p:plainそして「預言」の名の下にまた追い出されてしまうリキ。これが笑えるシーンになるのも可愛らしいノポン族ならではかもしれないですね。しかしこの預言、変なところで的を得ていたりするから侮れません。こういう意外性が物語を飽きのこない面白いものにしていると思うのです。

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意外性と言えばリキのこの発言。なんと子持ちの中年であることが発覚。このギャップは多くのファンを魅了して止みません。ラインからの二人称が「おっさん」になるのも好き。

エルト海・皇都アカモート

リキ加入のイベントも終わり、物語のフォーカスは再びメリアに向けられます。

テレシア討伐の報告へ皇都へ赴くメリア。監獄島への案内を欲するシュルク。テレシア討伐の助力を受けた恩もある上、目的地も同じであるためメリアは引き続きシュルク一行と行動を共にします。

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義理堅くちゃんと約束を守るメリア。すき。

ところでリキにしてもメリアにしても、成り行きでメンバーが増えいつの間にか大所帯となり、苦楽を共に旅を続けていたらいつの間にか最後まで着いてきてた、というのはRPGに限らず冒険譚全般に言える醍醐味ですよねぇ。実にいい。

さてシュルク一行とメリア、両者の共通の目的地は曲も景色も綺麗なエルト海。波の音と海鳥の鳴き声の癒しが、いつまでもそこにいたい気分にさせてくれます。

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上記の2枚の画像は @gamesitaina1120 様からご提供いただいたものです。この場を借りて感謝の言葉を述べさせて頂きます。

そんな美しいエルト海の浮遊都市、皇都アカモートに住まうのは高潔な貴族ハイエンター。ソレアンにカリアン、ロウランにタルコと次々とハイエンターの新キャラのお出まし。彼らの織りなす、今までになかったような複雑な人間関係が中盤の見所。高貴な身分ゆえ存在する多様な階級・立場が生み出す人間ドラマの数々には目が離せません。

皇都アカモートでのイベントでは常にハイエンターが登場するため、貴族特有の高貴な反面どうにも歯切れの悪い会話が続きます。

しかし、一見じれったいようなやり取りの中には父娘や兄妹の優しい愛情が見え隠れします。特に皇太子がカリアンではなくメリアであることが告げられるシーン。厳かな態度を保ちながらもメリアを皇太子として認めるソレアンとカリアンの、硬い表情や態度の裏に潜む気持ちに胸が熱くなります。

一方のホムスたち。この辺からシュルクを軸に強固な信頼関係がパーティに形成されている様子が会話の節々から感じられます。主人公を中心とした結束はRPGの醍醐味ですね。

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特に一緒にいた期間の長いラインからは全幅の信頼を寄せられる。この頃にはもうキズナグラムもピンク色のハートになっていることでしょう。

そしてメリアの方は立太子のために墓所詣へと赴くことになります。過去に多くの犠牲者を出したためか長らく行われていたなかったこの儀式ですが、自らの死を「視て」立太子を急がせるソレアンに対し(メリアをよく思わない)ユミアが提案する形で復活することとなります。メリアもメリアで民を納得させるためならば、と二つ返事で承諾。まっすぐで純粋なメリアの心の高潔さには胸を打たれました。

その頃シュルク一行は異端審問官からの「手厚い」歓迎を受けつつも未来視やカリアンからの情報でメリアの危機を予見し、ハイエンター墓所へと赴く。

その時に心配ながらもメリアを一人で行かせようとするカリアンをダンバンさんが説き伏せるシーンがあるのですが、これがまたかっこよすぎる(n回目)。

それほどに重要な儀式なのだろう

俺達が口を出せるようなもんじゃない

だが それはあんたら

ハイエンターの内での決め事だよな?

異民族のホムスがしゃしゃり出たところで

問題はなかろう?

それとも その墓所には

ホムスが入っちゃいけないってぇ

決まり事でもあるのか? 

なら 肩の力を抜けよ

墓所詣でとやらが

あんたらにとってどれだけ大切な儀式か知らん

そして、これ。

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妹を失ったダンバンさんがこれを言うのがあまりにも、あまりにも重い。

ならさ

任せろや 俺達に 

この後ハイエンター墓所でのイベントがあり、面白いポイントも 多くあるのですが割愛。(ラインがドジったり、メリアが祖先の「英霊」に認められたり、異母姉妹タルコとの確執があったりetc...)特にメリアが「英霊」に認められるくだりは、人格を擬似再現したコンピュータ的なものが出てきたり遺伝解析やホムスとの交差比率などSFちっくな要素が多く大好物です

そして墓所詣を経てシュルクのソレアンへの謁見。

ソレアンが皇首としてではなく一人の父親として、シュルクを高い志を持つ一人の青年と認めているのがグッときます。シュルクもそれに足るだけの覚悟と意志を見せてくれます。

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この潔さと謙虚さが彼の魅力。

ですが、それでもソレアンは監獄塔行きの勅許を出してはくれません。ソレアン側も自身の滅する未来を告げられているので逡巡するのも致し方ないのですが……

監獄島

シュルク達がソレアンからの回答を待っている間、アルヴィースとロウランが意味深な会話をしていたいり、エギルがチラッと映ったりと伏線が張られていきます。敵方の情勢をチラ見せしてくる演出良い

そして機神兵の襲撃により事態は急変。ゼノブレイド屈指の激アツイベントへと物語は進んでいきます。

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ここでもダンバンさんはかっこいい。ソレアンが立場上できないことを「俺達ホムスにゃ関係ねえ」の一言でやってのける。そこに痺れる憧れる。

監獄塔を登りきると、いよいよ巨人ザンザの登場。

始祖に封じられていたと言う得体のしれなさ・只者ではなさと、モナドの作者でありこの場で強化までしてくれると言う心強さが同居した不思議なキャラです(この時点では)。これが実際はアガレスで、中身がラスボスとはなぁ。

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この台詞がラストのモナド「神」に繋がるのが本当に熱い。

ですが、まさにモナドの枷が解き放たれようとするその時、黒い顔つきによる妨害が入ります。槍に貫かれあっけなくやられるザンザ。白い顔つきとの束の間の対話も、顔つきを前に怒りで我を失ったシュルクに遮られてしまいます。

そして、「敵との対峙」をバックに描かれる迫力の戦闘シーン。徹底的に憎らしい悪役として描かれる黒い顔つき。「視て」いたにも関わらず再び変えられなかった大切な人が死ぬ未来。それも、フィオルンの時と同じ黒い顔つきの手によって。シュルクの無念さ、悔しさがこれでもかと伝わってくるシーンです。

一方で黒い顔つきの武器や動きからムムカを連想するダンバンや、白い顔つきが攻撃を止める指示をしていることに気がつくカルナなど、細かい伏線もしっかり張られています。

「敵との対峙」が終わると同時に、いよいよシュルクモナドの枷を外します。その文字が何を意味するかも知らないままに……

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「人」。最終的に神を斬るに至るまでの重要な一段階。

モナドが解き放たれる様に呼応するかのように、曲は激アツの「名を冠する者たち」へ移行します。ここまで慚愧に堪えない展開が続いたきたので、このシーンのカタルシスは凄まじいものになります。こういう熱い展開の演出の巧みさを何度褒めても褒め足りないのがゼノブレイド

イベントシーンから引き続き「名を冠する者たち」がバックで鳴る戦闘を終えた後、いよいよ顔つきの中に人がいることが判明します。イベントシーンからBGMが継続してそのまま戦闘に移行するのはゼノブレイドのよさの一つ

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白い顔つきの中から出てきたのは、なんと死んだはずのフィオルン。

ここぞとばかりに使われるタイトル画面のアレンジ曲「シュルクとフィオルン」。使いどころが非常に効果的です。

フィオルンの生存を喜ぶのも束の間、記憶はないようですぐさま飛び立ってしまう白い顔つき。

そして「想いは内に…」に乗せて描かれるソレアンの死。

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展開や台詞の良さ、そして曲とのマッチ具合が完璧に決まって大きな感動をもたらすシーン。何度見てもボロ泣きしてしまいます。

こうして大きな犠牲を払いながらも新たなる力を得、人間としても一回り成長したシュルクの旅は続きます。


さて(上)(中)と主に「キャラ」にフォーカスを当てて説明した訳ですが、この前半部分でパーティメンバーは出揃いました。なので、(下)ではストーリーの時系列に沿う形式はそのままに、(上)での予告通り「物語」の構図や大きなテーマ性などを中心に書いていきたいと思います。

それではまた次回。なるべく早く執筆できればと思います。